トリコ 「カモネギか……」
- 2020.03.09
- SS
誰かが言った……。
ネギのような植物の茎を持ち、その茎と一緒に調理することで極上の鴨南蛮ができる鴨――カモネギがいると……。
カントー地方 某所
小松「ところで、トリコさん。カモネギの持ってる植物の茎って、葱じゃないんですか?」
トリコ「ああ。葱に似た植物の茎ってだけで、正しくは葱じゃねぇ」
トリコ「その植物の茎は巣を作る道具であり、武器であり、そして非常食なんだ」
トリコ「独特の硬さを持ち、たっぷり栄養の詰まったその茎は、カモネギの肉との相性も抜群……」
トリコ「最高の鴨南蛮……いや、カモネギ南蛮が作れるぜ!」
トリコ「シッ……静かにしろ、小松」
小松「え?」
トリコ「……」
ヒュゥンッ!
トリコ「フォークシールド!」
ガキィンッ!
カモネギ「カァモォッ!」
小松「うわぁあ!? 野生のカモネギが飛び出して来た!?」
カモネギ「カァッ!」ヒュッ
トリコ「くっ!?」
トリコ(早い……! 『こうそくいどう』か!)
カモネギ「カァァアッ!」
トリコ「ナイフ!」
カモネギ「カァァァモォォォッ!」
キィン!
トリコ「なっ……!?」
小松「持ってる植物の茎でトリコさんのナイフを受け止めた!?」
カシィンッ!
トリコ「『きりさく』……だが、この威力は何だ!?」
トリコ「あの茎……ただの茎じゃねぇ……」
トリコ「あの硬さに加えて、腕に付着した、この強い香り……」
トリコ「これは……!」
小松「どうしたんですか? トリコさん?」
トリコ「こいつはラッキーだぜ、小松!」
小松「え?」
トリコ「あのカモネギはただのカモネギじゃねぇ……超レア食材、『ながねぎ』を持ったカモネギだ!」
小松「……え、それただの葱じゃないんですか?」
トリコ「野性のカモネギが低確率で持ってると言われる、珍しい葱だ」
トリコ「『ながねぎ』を持ったカモネギは、その香りを嗅いで闘争本能を高め、相手の急所を見極めて狙ってくる……」
トリコ「この戦闘力に『ながねぎ』の稀少性も加えると……捕獲レベルは55ってところか……?」
トリコ「こいつは随分と捕獲し甲斐のある奴が出てきたじゃねぇか……」
カモネギ「……」
トリコ「また『こうそくいどう』か! まずいな……あの技は使えば使うほどスピードが増す……」
トリコ「目で追うのも徐々に辛くなってくる……だったら……!」
カモネギ「カァッ!」
キィン!
トリコ「くっ……!」
小松「トリコさん!?」
トリコ「フォーク!」
カモネギ「カモッ!?」
トリコ「ちょっち痛かったがな」
小松「む、無茶しますねぇ、トリコさん……」
カモネギ「カァ……ッ!」
トリコ「おっと、まだやるつもりか……結構なダメージを受けてるはずだが……」
カモネギ「カァアアッ!」ゴォッ
トリコ「な!? こいつ、『ブレイブバード』を使うつもりか!?」
トリコ「こいつ、ダメージを受けて倒れる覚悟で一気に勝負に来たか!」
トリコ「良い根性してるぜ……だったらこっちもそれに答えてやるぜ!」
カモネギ「カァァァアア!」
トリコ「15連……」
カモネギ「カァアモォオオオオオオ!」
トリコ「釘パンチ!」
ガィン!
パタッ
トリコ「ふぅ……やっと捕獲できたぜ、小松!」
小松「すごい戦いでしたね、トリコさん!」
トリコ「おう! 早速こいつの調理、頼んだぜ!」
小松「お任せください!」
トリコ「おおーっ! 美味そぉぉおおっ!」
トリコ「では早速、この世の全ての食材に感謝を込めて……いただきます」
ずるずる もぐもぐ
トリコ「んめぇぇえええええ!」
トリコ「そばを啜ると一緒に付いてくる、溶けたカモネギの脂!」
トリコ「舌の上でさらっと流れて口の中に甘さが広がる――!」
トリコ「カモネギの肉も嫌なクセが無く、噛み締める度に脂がじわじわ滲み出てきやがる!」
トリコ「それにこの『ながねぎ』! 加熱したことで生まれた甘さがカモネギの脂と絶妙に合わさって……たまんねぇぇぇええ!」
小松「本当に美味しいですねぇ、トリコさん!」
小松「え……カモネギを探してたんじゃないんですか?」
トリコ「ま、それもあったんだがな……まだまだ食ってみてえ奴がいるんだ」
小松「長い旅になりそうですねぇ……」
トリコ「そう言うなって! 長旅に見合う食材がゴロゴロ出てくるからよ!」
誰かが言った……。
濃厚で上品な甘みのあるミルク、『モーモーミルク』を出す牛――ミルタンクがいると。
ジョウト地方 某所
トリコ「んくっ……んくっ……っぷっはぁー! 『モーモーミルク』最高!」
トリコ「栄養素が体中を駆け廻って、一気に体力が回復されるぜ!」
トリコ「あえて言えば100は回復したな、うん」
小松「いや、何が100なんですか」
小松「で、トリコさんが探してた食材って、これなんですか?」
トリコ「いや、こいつは見つけたから買っただけだ……俺の目的はこいつじゃない」
トリコ「それと今回は、小松にも捕獲を手伝って貰うぜ?」
小松「え?」
コイキング「オッ オッ」ビチビチ
小松「また、コイキングですか……」
トリコ「リリースリリースっと……中々釣れねえな……場所変えるか……」
小松「っていうか、そもそも釣れるんですか? 狙ってるの、タコなんですよね?」
トリコ「ああ。名前はオクタン。高さ0.9メートル、重さ28.5キロの、割とデカいタコだ」
トリコ「それと言っておくが、釣り上げるのは……って、引いてるぞ小松!」
小松「えっ!? わっ、とと……」
ザバッ
小松「あ……何だ、コイキングじゃないけど、また小さな魚か……」
トリコ「いや……こいつだ!」
小松「え?」
トリコ「こいつがオクタンに進化する魚……」
トリコ「テッポウオだ!」
小松「えええええ!? 魚がタコに進化するんですか!? アリなんですかそれ!?」
カッ!
オクタン「ォォオオオ!」
小松「うわっ!? ホントにタコになった!?」
トリコ「丁度良く進化するタイミングだったとはな! 早速捕獲するとするか!」
オクタン「ォオォォオオオ!」ドン!
トリコ「っと、危ねぇ!」
小松「うぁあ!? 墨!?」
トリコ「オクタンの得意技、『オクタンほう』だ! 目に喰らうとやべぇぞ!」
小松「は、はい!」
トリコ「あの『オクタンほう』の威力から察すると……捕獲レベルは25ってところか……」
オクタン「オォオクタァァアン!」バシュゥン!
トリコ「『バブルこうせん』……泡なら片っ端から割りゃいいだけだ! フライングフォーク!」
パァンパァン!
オクタン「ォ……」ピッ
トリコ「オクタン自身には届かなかったか……だが、あの程度の威力なら何を撃たれても……」
トリコ「二発目の『オクタンほう』……だが、随分とトンチンカンな方向に撃ったもんだな!」
トリコ「フォークやナイフで弾くまでもねえ! このまま接近して……」
小松「トリコさん! 危ない! 後ろ!」
トリコ「なっ!?」
ドン!
トリコ「ぐっ!?」
小松「トリコさん!」
―― オクタン「ォ……」ピッ ――
トリコ(あれは『ロックオン』か……!)
トリコ(『ロックオン』は次の技を標的に確実に攻撃を当てる補助技……)
トリコ(俺に真正面から向かっても勝てねえと踏んで、こいつ……!)
オクタン「ォオオ!」バシュゥン!
トリコ「っ! また『バブルこうせん』……フライングフォーク!」
ヒュッ
トリコ「しまっ……『オクタンほう』のせいで技の精度が……」
ズガガァン!
トリコ「ぐぁあああ!?」
ドボォン!
小松「泳げるだろうけど、結構ダメージを受けたし、ヤバいような……」
オクタン「ォオオオ……」
小松「って、僕もヤバい!?」
オクタン「オクタァァアアン!」
小松「うわああああ!?」
ザァン!
オクタン「ォオ!?」
小松「トリコさん!?」
トリコ「へっ……テメェが海に落としてくれたおかげで……」
トリコ「『オクタンほう』で喰らった墨は綺麗さっぱり落ちちまったぜ!」
小松「あの構え……また『ロックオン』を……!」
トリコ「『ロックオン』は確かに強力だが……」
トリコ「その技を発動するための時間が必要なのが最大の弱点だ! 20連……」
オクタン「!」
トリコ「釘パンチ!」
ドォン!
ズゥン
トリコ「よっしゃあ! 捕獲成功だ!」
小松「トリコさん! 『オクタンほう』で受けたダメージは大丈夫なんですか?」
トリコ「問題ねーよ。目がまだちょっと痛ぇけどな……」
トリコ「それより飯だ飯! 頼むぞ、小松!」
小松「はい!」
トリコ「うっひょぉぉお! この世のすべての食材に感謝を込めて、いただきます!」
もぐもぐ
トリコ「くーっ! 噛み応えのあるこの歯応え! さらに噛む度に溢れる旨味! 米との相性もバッチリだ!」
小松「お刺身もお醤油無しで食べられるくらい味がしっかりしてますよぉ!」
トリコ「このオクタン焼き! こんなでけぇタコを使ったタコ焼きはねぇぜ! オクタンだからできる料理だ!」
小松「この唐揚げ、揚げたことで身そのものもパリッとした食感に変わって、箸が止まりません!」
トリコ「この調子で次の食材も捕獲するぜ、小松!」
小松「はい! ってまだやるんですか!?」
誰かが言った……。
特定の条件下で出現すると呼ばれる島、まぼろしじま。
その島の中でしか自生しない、海の力を宿すと呼ばれる謎の木の実――チイラのみがあると。
ホウエン地方 某所
トリコ「ま、その実は、今回関係ねえけどな」
小松「関係無いんですか!?」
トリコ「狙いは……ほら、あいつだ」
小松「あれは……?」
トリコ「首に甘くて美味いフルーツを実らせる、植物の竜……トロピウスだ」
トロピウス「ピゥー」
トリコ「この辺りに生息するトロピウスは、捕獲レベル25前後ぐらいだが……」
トリコ「無理やり獲ろうとしなけりゃ、かなり簡単に獲らせてくれるって話だし、早く獲りに行こうぜ!」
小松「あ、待ってくださいよトリコさ……」
ザッ
小松「うわっ!?」
トリコ「小松!?」
トリコ「あん? 石にでも躓いたんじゃねーのか?」
小松「いえ、今のは間違いなく……」
ガッ
トリコ「うぉっ!?」
小松「ト、トリコさん!?」
トリコ「何かが、俺の体をどついてきやがった……」
トリコ「だが……一体何だ!? どこから攻撃を……」
トリコ「いや……違う。トロピウスとは違う、獣の匂いがする……」
トリコ「おそらくはそいつの匂いだ……匂いの方向は……こっちの草むらの辺りだが……」
小松「……何も、いないみたいですけど……」
トリコ(いや……間違いなく何かがいる匂いがする……だが、見えない……)
トリコ(……見えない?)
ガサッ
カクレオン「クォッ!?」
小松「うわぁあ!? 急に何か出てきた!?」
トリコ「やっぱり、カクレオンか……威嚇したらあっさり出てきたな……」
小松「カクレオン……?」
トリコ「驚くと元の色に戻っちまうから、匂いのある場所に対して威嚇してみたってわけさ」
小松「なるほど……」
カクレオン「クォーン」タタタ
小松「あ、逃げちゃいました……」
トリコ「期にすんな。多分、ちょっとイタズラしたくなっただけなんだろうぜ」
トリコ「それより、トロピウスの果物の捕獲だ!」
トロピウス「ピゥー」
小松「今回は特に戦いもせずに捕獲できましたね。カクレオンも逃げちゃいましたし」
トリコ「食うために必ず何かを殺さなきゃならねぇってことはねぇよ」
トリコ「カクレオンも、別に俺たちに思いっきり敵意があったわけじゃねぇしな」
トリコ「奪う命は最低限……食う量だけだ!」
小松「……はい!」
トリコ「さあ、食おうぜ!」
もぐもぐ
トリコ「うんめぇぇええ!」
トリコ「しっかり熟したバナナのような、濃厚な甘味!」
トリコ「果物にありがちな青臭さもまったくねぇ!」
小松「トリコさん! トロピウスの果物で、フルーツパウンドケーキを作ってみたんですが……」
トリコ「おおぉぉっ! でかした小松!」
トリコ「くはぁーっ! 熱したことで甘味と柔らかさが増して、さらに断面から香るこの芳醇な香り……鼻の奥まで甘味で包まれる気分だぜ!」
トリコ「しかもこの香り、植物由来のおかげか、全然気持ち悪くならねぇ! いつまでも嗅いでいたい香りだ!」
トリコ「小松! おかわり!」
小松「ちょっと待っててください! 今すぐ作りますから!」
おわり
-
前の記事
ポケモンって火力アップアイテムが少なすぎ 2020.03.09
-
次の記事
サトシのリザードンっていつの間にレシラムと戦えるようになったの? 2020.03.09