サトシ「俺はもう限界なんだよ」 ピカチュウ「……」
- 2020.04.23
- SS
サトシ「なぁ、ピカチュウ」
ピカチュウ「?」
サトシ「俺前から思ってたことがあるんだけどさ」
ピカチュウ「……」
サトシ「お前何でいつまでたっても進化してくんないの?」
ピカチュウ「……」
ピカチュウ「……」
サトシ「なのにお前は一向に進化しようとしない」
サトシ「俺は毎回次の日になったらライチュウに進化してるんじゃないかって期待していたよ」
サトシ「でも、お前はことごとく進化を拒否した」
ピカチュウ「……」
サトシ「お前はライチュウとかエレブーとかに負けるジンクスがあったからな」
サトシ「お前がそいつらに負けるたびに俺は常に雷の石をスタンバイしていた」
ピカチュウ「……」
ピカチュウ「……」
サトシ「そりゃあ、最初の頃は俺だってピカチュウのまま強くなって、リベンジしてやろうぜとか言ってたけどさ」
サトシ「普通何回も負けたら進化して強くなろうとか考えない?」
ピカチュウ「……」
サトシ「お前の我が儘が俺だけじゃなくチーム全体に迷惑をかけてるんだぜ?」
ピカチュウ「……」
サトシ「もう意地張るのはやめよう……な?」
ピカチュウ「……」
ピカチュウ「……」
サトシ「いくらレベルを上げてスピードを上げようが、パワーを高めようが……」
サトシ「お前地方変わるたびにレベルリセットされてんじゃん」
ピカチュウ「……」
サトシ「だから新しい地方での旅の初戦は大抵負けるんだよ」
サトシ「あのシューティとかいうぽっと出のガキに負けた時はさすがにイラッときたよ」
ピカチュウ「……」
サトシ「あいつは見た感じ10歳前後。俺は25歳超え」
サトシ「そんなに経験の差があるのに負けるとか恥ずかしくてやってらんねぇよ……」
ピカチュウ「……」
ピカチュウ「……」
サトシ「なぁ、もういいだろ?」
サトシ「俺はもう限界なんだよ」
ピカチュウ「……」
サトシ「お前は今までピカチュウとしてよく頑張ってきたよ」
サトシ「だから、今さら進化したって誰も咎めやしない」
サトシ「人気なんて気にするなよ!強くてなんぼ、勝ってなんぼだろ?」
ピカチュウ「……」
サトシ「……俺も今まで散々気合いだの根性だのでお前に無理をさせてきたけど……」
サトシ「お前が進化して強くなれば、そんなこともなくなる!お前が自由にやっていいんだ!」
ピカチュウ「……」
サトシ「お前が進化して強くなれば今まで勝てなかった相手にも勝てるようになる!」
サトシ「能力も大幅に上がる!」
サトシ「そしたらイッシュリーグも制覇できる!」
サトシ「いいことばかりじゃないか!」
ピカチュウ「……」
サトシ「な?みんなのためとも思って」ゴソゴソ
サトシ「この雷の石を……受け取ってくれよ」スッ
ピカチュウ「……」
サトシ「ほら」クイッ
ピカチュウ「いい加減にしろよ」
ピカチュウ「俺のため……?みんなのため……?」
ピカチュウ「笑わせるなよ、サトシ」
サトシ「なっ……!」
ピカチュウ「お前は結局自分を満たしたいだけの自己中心的人間……」
ピカチュウ「みんなのためなどと上辺こそいいことを並べ立ててはいるが……」
ピカチュウ「結局は自分のために言っているに過ぎない」
サトシ「……」
ピカチュウ「進化すれば強くなる?」
ピカチュウ「それは、確かにその通りだ」
ピカチュウ「しかしな、強くなり、勝つことばかり考えていては本質的な何かを失う」
サトシ「本質的な何か……?」
ピカチュウ「ポケモンバトルにおいて勝利というのは確かに必要なものだが……」
ピカチュウ「何も勝ちだけがすべてではない」
サトシ「!!」
ピカチュウ「さっき言った本質的な何かとは、ポケモンバトルにおけるその課程のことだ」
ピカチュウ「勝てればいいにこしたことはないが……」
ピカチュウ「負けた時の方が学ぶべき点は多い」
サトシ「!!」
ピカチュウ「カントーで旅をしていた頃、俺はマチスのライチュウとの戦いに敗れ、ショックを受けていた」
ピカチュウ「実力の差をありありと見せつけられた。自分の弱さに絶望もした」
サトシ「……」
サトシ「……」
ピカチュウ「お前は俺のしたいようにしろと言ったが……俺は正直迷っていた」
サトシ「!!」
ピカチュウ「進化すればピカチュウの時より強くなれるし、マチスのライチュウにも勝てるかもしれない……そう思った」
ピカチュウ「だが俺は結局、進化の道を選ばなかった」
ピカチュウ「ピカチュウの時に負けたならピカチュウのままでリベンジしようと考えたからだ」
サトシ「……」
ピカチュウ「俺はあの時負けて、自分を見つめ直して、特訓して、そしてライチュウにリベンジして勝つことができた」
ピカチュウ「自分の選択は間違ってなかったと思う」
サトシ「あぁ……」
ピカチュウ「レベルをリセットされたって、負けたっていい」
ピカチュウ「ピカチュウのままで、お前と旅をして、一緒に強くなって、バトルに勝って……」
ピカチュウ「ずっとそうしていきたいと思ってた」
サトシ「……」
ピカチュウ「だからこそさっきのお前の発言には絶望したよ」
ピカチュウ「お前も俺と同じ考えだと思っていたんだがな……」
サトシ「……俺は」
ピカチュウ「……?」
ピカチュウ「……」
サトシ「自分が勝ちたいからってピカチュウに進化を強要したりして……」
サトシ「でも、今のピカチュウの話を聞いて旅を始めたばかりの頃の気持ちを思い出したような気がするよ」
ピカチュウ「あぁ」
サトシ「あの頃のまだ何も知らない純粋な気持ちで……」
サトシ「これからをやっていこうと思うんだ」
ピカチュウ「……あぁ!」
サトシ「じゃあ、早速特訓だピカチュウ!目指すはイッシュリーグ制覇!頑張るぞー!」
ピカチュウ「ピッカァ!」
―――――――――――――――
―イッシュリーグ予選―
ワーワーワーワー
サトシ「ピカチュウ!10万ボルト!」
ピカチュウ「……」バリバリバリ
サイドン「……」バリバリバリ
サトシ「なっ!効いてない!?」
アイリス「サトシー!ピカチュウの電気技は地面タイプのサイドンには効かないわよー!」
サトシ「え!?そうなの!?」
サイドン「おらっ」ドゴゴゴゴ
ピカチュウ「ぐふっ」ドサッ
サトシ「ピカチュウーーー!!」
ピカチュウ「(純粋過ぎんだろ……)」チーン
おしまい
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