ルカリオ 「今日もマスターに抱きつけませんでした…」
- 2020.04.19
- SS
(某所のパソコン、ボックス2)
ルカリオ「死のう」
サーナイト「いやいやいや!そのくらいで死ぬとかあり得ないから!」
ルカリオ「あ、サーナイトさん。ただいま戻りました」
サーナイト「おかえり。って言うか、死ぬとか聞こえたけど」
ルカリオ「これは『鬱だ』くらいの意味なんで、あまり気にしないで下さい」
サーナイト「気になるよ!」
ルカリオ「実際には死にません。多分」
サーナイト「多分って…」
ルカリオ「試合は勝ちました」
サーナイト「うん。で、その後は?」
ルカリオ「死のう発言から察して下さい」
サーナイト「また抱きつけなかったんだ」
ルカリオ「やっぱり私には、試合後にマスターに抱きつくなんて無理なんですかね!」
サーナイト「何も泣かなくても」
ルカリオ「無理ですね!無理でしょう!よし!死のう!」
サーナイト「いやいやいや!泣きながら死ぬとか言われると怖いから!」
ルカリオ「実際には死にません。多分」
ルカリオ「あうっ」
サーナイト「そのくらいでいちいち死んでたら、私なんてとっくにあの世にいってるわー!」
ルカリオ「うう…」
サーナイト「自慢じゃないけどねえ!ルカリオよりずっと先輩だけどねえ!マスターに抱きついた事なんか一度もないわー!」
ルカリオ「申し訳ありませんでした!サーナイトさんの気持ちも考えず自分の事ばかり!」
サーナイト「分かればいいのよ」
ルカリオ「自分が情けないです!死のう!」
サーナイト「それはもういいから」
ルカリオ「実際には死にません。多分」
サーナイト「私だってルカリオがこんなキャラなんて思わなかったわよ」
ルカリオ「サーナイトさんと言えば、クールビューティなポケモンとして大人気。うちのポケモンにも隠れファンが多いと聞くのに、こんな」
サーナイト「こんな?」
ルカリオ「非モテワードを絶叫しながら、涙目で平手打ちをかますような、アレな方だとは」
サーナイト「アレとか言わないでよ。死ぬ死ぬ詐欺よりマシでしょ」
ルカリオ「詐欺とか言われてしまいました。死のう」
サーナイト「実際に死ぬの?」
ルカリオ「実際には死にません。多分」
サーナイト「詐欺じゃん」
ルカリオ「よそのサーナイトは知りませんが、サーナイトさんの場合、本当にイメージだけですよね」
サーナイト「全く反論できない…」
ルカリオ「でも気持ちはよく分かります。イメージ的にクールそうと言うだけで、いかに行動に制限の多い事か」
サーナイト「私だって試合後は、マスターに頭撫でてもらったり、時には抱き合って勝利を喜んだりしたいんだけどね。そういう雰囲気じゃないんだよね」
ルカリオ「いつも試合後はどんな感じなんですか?」
サーナイト「言葉ではすっごく褒めてくれたり、いたわったりしてくれるんだけど、スキンシップはほぼ皆無だよね。たまに肩を、こうポンッと」
ルカリオ「あ、それ私とほぼ同じです」
サーナイト「やっぱりそうなのかな…」
ルカリオ「そんな事したら、ついと身をかわして『マスター、お戯れを』みたいな、生温かい目で見られそうな気がします」
サーナイト「それこそただのイメージなんだけどね」
ルカリオ「私の場合はどうですかね?マスターとの身長差が約50センチなので、なかなか撫でたくなる位置に頭があると思うんですが」
サーナイト「ルカリオの場合は、頭なんか撫でたら、怪訝そうな目でこっちを見て、『お前は一体何をしているんだ』とでも言わんばかりのリアクションを取りそうだよね」
ルカリオ「サーナイトさんよりさらにイメージ悪いですね。これはもう死ぬしかない」
サーナイト「はいはい」
ルカリオ「実際には死にません。多分」
サーナイト「そうだね」
ルカリオ「もうね、そんなイメージを築いてきた先輩方は、全員私に謝って欲しいですよ」
サーナイト「でも格闘タイプなわけだし」
ルカリオ「波導とか知ったこっちゃないですよ」
サーナイト「種族のアイデンティティ否定しちゃったよ」
ルカリオ「それにルカリオってのは、たいてい男ですから。そっちのイメージが定着しちゃってますよね」
サーナイト「確かに女ルカリオってあんまり見ないね」
ルカリオ「そこらへんを考慮してですね、マスターは私をもっと猫可愛がりするべきかと思うんですが」
サーナイト「でも、ポケモンの場合、男でも女でも、それほど見た目は変わらないからね」
サーナイト「それマスター的には褒め言葉だよきっと」
ルカリオ「それは分かってますし、嬉しかったのも事実ですが、こう見えても私も一応女子の端くれ。ちょっと複雑かなと」
サーナイト「本当は何て言ってもらいたかったの?」
ルカリオ「やっぱりかわいいとか、プリティとか、ラブリーとか、キュートとか」
サーナイト「あー分かる。すっごく分かる」
ルカリオ「ちなみにサーナイトさんは、マスターに何か言ってもらった事は?」
サーナイト「きれいとか…」
ルカリオ「サーナイトさんの裏切り者ー!!」
サーナイト「わっ!びっくりした!」
サーナイト「えっ?えっ?」
ルカリオ「さあ盛り上がってまいりました!死にたくなってまいりました!」
サーナイト「おっ落ち着いてルカリオ!」
ルカリオ「へっ、勝ち組のお嬢さんが、この負け犬めに言葉をかけて下さるとは、ありがたい事ですねえ」
サーナイト「ええ?どうして私が勝ち組?」
ルカリオ「きぃぃしらばっくれて図々しい。きれいとか、勝ち組の称号じゃないですか」
サーナイト「ルカリオだってイケメン認定されてるじゃん」
ルカリオ「あ~やだやだ、これだから勝ち組は。イケメンときれいじゃ格が違いますよ。イケメンが念力なら、きれいはサイコブーストくらいの差があるじゃないですか」
ルカリオ「それは言うまでもなく、日常的にマスターになでなでしてもらったり、ぎゅっとしてもらったり、時にはだだだ抱っことかまでありのポケ充ライフですが」
サーナイト「そうでしょ。でね、ルカリオはきれいって言われるのを過大評価してるみたいだけど、いくらそう言ってもらっても、それは私たちの求めるポケ充ライフにはつながらないのよ」
ルカリオ「そんなもんですか」
サーナイト「きれいなら鑑賞価値は高いかもしれないけど、逆にスキンシップとかは減るのよ。ソースは私」
ルカリオ「そうですか…。取り乱してしまい、申し訳ありませんでした」
サーナイト「いいのよ」
ルカリオ「かくなる上は」
サーナイト「もはやルカリオの死ぬ死ぬは様式美よね~」
ルカリオ「まだ何も言ってません。そして実際には死にません。多分」
ルカリオ「やっぱりそうなりますよね。同性から見ても、ミミロップさんかわいいですし」
サーナイト「見た目もかわいいのに、仕草とか表情もいちいちかわいいとか反則だよね」
ルカリオ「しかもモフモフ装備。死角はありません」
サーナイト「とどめとばかりに、あの人色違いなんだよね」
ルカリオ「もうやめて!ルカリオのライフはゼロよ!」
サーナイト「そう言えば、ミミロップさんの動きを研究するとか言ってなかったっけ」
ルカリオ「確かに参考になると思い、ここ数ヶ月、ミミロップさんのモーションを勉強させてもらいました」
サーナイト「うん」
サーナイト「すごいすごい」
ルカリオ「その後は練習に次ぐ練習。イメージ上のミミロップさんの動きと自分の動きを、フレーム単位でシンクロさせていく作業を黙々とこなす毎日」
サーナイト「こういう時の、ルカリオの執念と集中力は尊敬するわ」
ルカリオ「今の私は、スピードでは2割、キレでは3割増しで、ミミロップさんの動きを完璧に再現する事が可能です」
サーナイト「スピードとキレは別にいらないと思うけど、まあ、よくやったよね」
ルカリオ「その結果、気付いた事があります」
サーナイト「うん」
ルカリオ「ミミロップさんの動きを私がやってもキモいだけ、と」
サーナイト「うわっ、身も蓋もない結論」
サーナイト「うん頑張ったよ。泣いてもいいよ」
ルカリオ「死んでもいいですよね?」
サーナイト「それはダメ」
ルカリオ「結局、借り物の萌え要素で、自分をよく見せようとしてもムダだという教訓と思って諦めました。って言うか、そうとでも思わなきゃやってられません」
サーナイト「まあ、参考にする程度ならともかく、いきなり最高峰を完コピってのは、ちょっと無謀だったかもね」
ルカリオ「サーナイトさんは、誰か参考にしてるポケモンとかいないんですか」
サーナイト「私は最近ではラティアスかな」
ルカリオ「ああ、ラティアスもかわいいですよね」
サーナイト「でもね、動きをコピーしてみたんだけど、すぐに壁にぶち当たっちゃってね~」
ルカリオ「壁?」
サーナイト「あの子、飛べるじゃない」
ルカリオ「そういう事は始める前に気付いて下さい」
ルカリオ「地震のダメージも普通に通るくらいの、微妙な浮きっぷりですけどね」
サーナイト「そうなんだよね~。で、色々試してみたんだけど」
ルカリオ「試したんですか。そのチャレンジ精神は尊敬します」
サーナイト「結論から言うと、ラティアスみたいに空中で自由に動き回れない以上、真似とか無理と」
ルカリオ「まあ普通なら、試してみようとすら思わないですよ」
サーナイト「それと、今気付いたけど、私に妹キャラは無理があるよね」
ルカリオ「サーナイトさんって失礼ですけど、結構…」
サーナイト「それ以上言わないで。自覚してるから」
ルカリオ「はい」
サーナイト「こうやって色々努力するのは悪い事じゃないけど、努力してかわいく見せようとしてる時点で、天然の子にはもう負けてるよね」
ルカリオ「それを言わないで下さい。発作的に死を選びそうです」
サーナイト「ミミロップさんやラティアスみたいな表情や仕草が、自然に出てくるからかわいいわけでね」
ルカリオ「言ってみれば私たちのは計算ですからね」
サーナイト「計算とかバレたら、マスター萎えるよね」
ルカリオ「萎えますね。萎え萎えのナエトルですよ」
サーナイト「マスターとイチャイチャしたい気持ちの強さなら、誰にも負けない自信があるんだけどね~」
ルカリオ「うまくいきませんね、お互い」
ルカリオ「そんなに私を自決に追い込みたいんですか」
サーナイト「この間、パチリス君がマスターに抱っこされて、頬ずりしてるのを見て思い知ったわ。誰が言ったのか知らないけど、かわいいは正義って至言よね」
ルカリオ「抱っこ、頬ずりのコンボとか最強じゃないですか!やだーー!」
サーナイト「それでもまあ、パチリス君は、中身もかわいい男の子だからいいんだけどね…」
ルカリオ「?」
サーナイト「実はね、私、うちのポケモンで1人、絶対に許せないヤツがいるのよ…」
ルカリオ「温厚なサーナイトさんがそんなに憎むポケモン?いったい誰ですか?」
サーナイト「マリルリ」
ルカリオ「マリルリさんですか?何でまた」
ルカリオ「何ですとー!だってマリルリさんって、見た目はちょっとかわいいけど、中身おっさんじゃないですか!」
サーナイト「そうなのよ!そこが許せないのよ!ほら、あいつ短足じゃない。水の中ならともかく、陸での移動は結構面倒らしいのね」
ルカリオ「それは何となく分かりますけど」
サーナイト「でね、あいつと一緒にパーティ組んだ時にね、移動の前にあいつがマスターの袖をクイクイって引っ張るのよ」
ルカリオ「はい」
サーナイト「そうしたらね、マスターが『何だマリルリ、また抱っこか?仕方ないなあ』って言ってあいつを抱き上げたのよ!」
ルカリオ「マリルリーー!…さん」
サーナイト「で、あいつはね、『おっ大将!いつもすまねえな!いやあ楽チン楽チン!』とか言ってやがるのよ」
ルカリオ「殺意の波導に目覚めそうです」
ルカリオ「はい」
サーナイト「『おうサーナイト!獲物を狙うヒットマンの目になってやがるぜ!気合い十分だな!今日の試合は期待できそうだぜガハハハハハ!』とか言って大喜びだったわよ」
ルカリオ「許せませんね」
サーナイト「まったく、マスターの抱っこの価値も分からないヤツが、見た目ちょっとかわいいってだけで何だってのよ」
ルカリオ「まったくです」
サーナイト「マスターもお優しいから。あんなフーセンダルマ、サッカーボールみたいにゴロゴロ蹴り転がして移動すればいいのに」
ルカリオ「…さすがにそれはちょっと」
サーナイト「そう?雑巾の代わりになっていいと思うけど。床もきれいになって一石二鳥だし」
ルカリオ「サーナイトさんって敵に回すと結構怖いですね」
サーナイト「…あのさ、前から聞きたかった事があるんだけど、いい?」
ルカリオ「はい。どうぞ何でも聞いて下さい」
サーナイト「ルカリオに初めて会った時、レベルはそんなに高くないのに、もう進化してたよね」
ルカリオ「よくぞ聞いてくれました。我々は進化の条件として、トレーナーになついている事が必要なんです」
サーナイト「なつき進化ってヤツだね」
ルカリオ「そうです。そして自慢じゃありませんが、なつき進化組で私ほど早く、低レベルで進化を成し遂げたポケモンは、うちにはいないはずなんです」
サーナイト「そうなんだ」
ルカリオ「なにせ、タマゴから孵った瞬間からマスターにゾッコンですから。好意を形にするいい機会だと思い、頑張りました」
サーナイト「なつきって頑張りでどうにかなるんだ」
ルカリオ「1日足らずですかね。タマゴから孵った翌日に、学習装置を持たされて戦闘に出て、最初の戦闘でレベルが5くらい上がって、そこでもうルカリオになってましたから」
サーナイト「はやっ!」
ルカリオ「さすがのミミロップさんも、この記録だけは一目置かざるを得ないと思いますよ」
サーナイト「うん、そうだね。私もすごいと思うよ」
ルカリオ「サーナイトさんに褒めて頂くとは光栄です」
サーナイト「………」
ルカリオ「………」
サーナイト「………」
ルカリオ「…あの~」
サーナイト「え?どうしたの?」
ルカリオ「何か言いたい事があったのでは」
ルカリオ「そうでしょうか」
サーナイト「うん。それ以上何もないよ」
ルカリオ「じゃあ何で、いきなりこんな事聞いてきたんですか?」
サーナイト「ちょっとした好奇心かな」
ルカリオ「でも変ですよね。かわいいポケモンがどうのという話をしてたのに、いきなり私の過去の話に飛ぶなんて」
サーナイト「うっ」
ルカリオ「あまりにも脈絡がないですよね」
サーナイト「そっそれは」
ルカリオ「すごく気になるんで、何を言おうとしてたのか教えてもらえませんか」
サーナイト「………」
ルカリオ「お願いします」
ルカリオ「イヤだなあサーナイトさん。私がいつそんな事を」
サーナイト「しょっちゅうよ!しょっちゅう!」
ルカリオ「まあそれは置いといて、話を進めましょう」
サーナイト「あのね、リオルって結構かわいいポケモンじゃない」
ルカリオ「………」
サーナイト「だからね、リオルのうちに、マスターに甘える機会がなかったのかなって、そこが疑問だったのよ」
ルカリオ「………」
サーナイト「でも話を聞いて、1日じゃさすがに無理だったんだろうなって」
ルカリオ「………」
サーナイト「…もしもし」
ルカリオ「死にたい…」
サーナイト「やっぱりこうなるのね…」
サーナイト「マスターには伝わってるって、ルカリオがマスターの事、大好きだって」
ルカリオ「うう…ありがとうございます…。でも、諦めきれません…。リオルのうちならマスターとあんな事やこんな事も…」
サーナイト「うん。何言っても慰めにはならないと思う。でもね、ちょっとお姉さんの昔話を聞いてくれる?」
ルカリオ「…はい」
サーナイト「まあ当り前の話だけど、私にもラルトスだった頃があるのよ。自分で言うのも何だけど弱っちくてね、はっきり言って戦力外だったわね~」
ルカリオ「………」
サーナイト「当時の私ができる事なんて、テレポートでみんなをポケセンに運ぶくらいでね。それでもマスターは私をパーティに入れてくれたし、先輩たちもイヤな顔一つしないで、私が経験を積めるようにフォローしてくれたわ」
ルカリオ「………」
サーナイト「それにラルトスの時に比べて、見た目も女の子っぽくなったしね。そういう意味でもやっぱり嬉しかったわ」
ルカリオ「はい」
サーナイト「でね、私がキルリアに進化した時ね、5日くらいかけて各地を回って、野生のポケモン相手に経験を積んだんだけど、パーティにマッスグマさんがいたのよ」
ルカリオ「うちのものひろい神ですか」
サーナイト「もともと、ものひろいでは神と言われてた人だけど、この時は特に神がかっててね、旅の間にふしぎなアメを12個拾ったのよ」
ルカリオ「それはすごいです」
サーナイト「うん。私もすご~いとか言ってたんだけどね。まさかそのアメが全部自分のところに来るとは思わなかったわ」
ルカリオ「あー」
ルカリオ「じゃあサーナイトさんがキルリアでいたのって…」
サーナイト「1時間くらいかな。ほら、ふしぎなアメっておいしくないじゃない。食べるのに時間かかっちゃって」
ルカリオ「………」
サーナイト「ノリって言ったけど、現実問題としてね、キルリアになっても私のレベルはパーティの先輩たちには及んでなかったからね。アメを完食してようやく近付いたってところだったのよ」
ルカリオ「………」
サーナイト「単純に嬉しかったよね。ありがたい事に、私の周りはいい人たちばっかりで、逆に気をつかってくれてたけど、自分では見習いって事での肩身の狭さは勝手に感じてたからね~」
ルカリオ「………」
ルカリオ「そうですか」
サーナイト「もっとも、あの頃はマスターも若かったからね。調子に乗ってジムリーダーのルカリオに一撃で瀕死にされたのも、今となってはいい思い出よね~」
ルカリオ「あはは…」
サーナイト「すっごく痛かったわよ」
ルカリオ「…何かすみません」
サーナイト「まあそんな感じでね、駆け出しの頃のマスターと苦楽を共にして来たわけだけど、そうなるとどうしても、関係としては『同士』みたいになってくるよね」
ルカリオ「はい」
サーナイト「マスターがトレーナーとして名が売れて来て、手持ちのポケモンが増えて来ても、古株のメンバーには格別の信頼を置いてくれてるのはよく分かったからね」
ルカリオ「………」
ルカリオ「………」
サーナイト「その度に思い出すのが、たった1時間でキルリアからサーナイトに進化したあの時の事なんだよね」
ルカリオ「………」
サーナイト「あの時、サーナイトに進化しないで、もっとキルリアでいられたら、マスターとの関係はもっと違う形になってたんじゃないか、ってね」
ルカリオ「………」
サーナイト「その頃にはね、トレーナーの間では、サーナイトよりキルリアの方がかわいくて好きだって人も少なからずいる、みたいな話も聞いてたから、なおさらそんなふうに思ったのかもね」
ルカリオ「………」
ルカリオ「サーナイトさん…」
サーナイト「でもね、私はサーナイトに進化した事は後悔してないよ。あの頃のマスターを支える事ができたのは、私の誇りだから」
ルカリオ「………」
サーナイト「ただね、やっぱり、トレーナーとして余裕が出てきたマスターに、恵まれた環境で仕える事ができるポケモンを、羨ましく思う気持ちはあったんだろうね」
ルカリオ「………」
サーナイト「で、話はかわるけどね、今、マスターの手持ちのポケモンって、かなり充実してきてるよね」
ルカリオ「はい。私もそう思います」
サーナイト「伝説や、幻って言われてたポケモンだっているしね」
ルカリオ「………」
サーナイト「伝説のポケモンじゃなくてもね、新しく入ってくる子たちは、やっぱりみんな、私たちの頃とは違うなって思うよ。もちろんルカリオもね」
ルカリオ「そんな」
サーナイト「私はね、マスターは近い将来にチャンピオンになる人だって信じてるけど、でも、間違いなくその時のパーティに私はいない」
ルカリオ「サーナイトさん…」
サーナイト「それは今マスターが一生懸命に育ててる、若いポケモンたちの役目なんだろうね」
ルカリオ「………」
ルカリオ「………」
サーナイト「まあ、錆び付かない程度に使ってはくれてるけど、重要な試合とかは、もうルカリオたちにお任せだよ」
ルカリオ「………」
サーナイト「寂しくないって言ったらウソになるけどね。でもね、私、こう思ったんだ」
ルカリオ「?」
サーナイト「今まで頑張って来たんだから、少しくらい、自分のために、自分のしたい事をしてもいいよね、って」
ルカリオ「自分のしたい事、ですか?」
サーナイト「うん。後、ついでと言っちゃ何だけど、マスターからご褒美ももらいたいな~、と」
サーナイト「そう。ポケ充計画」
ルカリオ「まさかそんな背景があったなんて…」
サーナイト「今の話聞いて、結構すごいと思わなかった?」
ルカリオ「すごいと思いました。ある意味」
サーナイト「ある意味って何よ。でもまあ、半分楽隠居のポケモンの道楽としてはいいと思うでしょ」
ルカリオ「まあ…」
サーナイト「でもね、私と違って現役バリバリのルカリオには、きついんじゃないかな~」
ルカリオ「えっ」
サーナイト「ルカリオは、私より試合の出場機会もはるかに多いし、結果も出さなきゃいけないからね~。マスターにかわいがられる事ばっか考えてるわけにもいかないよね~」
ルカリオ「それは…」
ルカリオ「!」
サーナイト「ほら、その頃には、私はマスターとラブラブイチャイチャになってる予定だから、もっと実用的なアドバイスもできるだろうしね~」
ルカリオ「ぐぬぬ…」
サーナイト「まあ、仕方ないよね。ちょっとつまずいただけで、いちいち死ぬ死ぬ言ってるような…」
ルカリオ「冗談じゃありません!誰が諦めるもんですか!」
サーナイト「あっやるんだ」
ルカリオ「当然です!進化でちょっと失敗したっぽいですが、ポケ充ライフ、見事実現してみせます!」
サーナイト「そっか」
ルカリオ「もちろん、戦闘の方の結果も両立してみせます!抜け駆けは許しませんよ!」
サーナイト「うん、わかった」
ルカリオ「切り替えはやっ!」
サーナイト「当然でしょ。やるって決めたらウダウダしてらんないわよ。で、どう?普段クールに見えるポケモンが、時折見せるかわいさで攻めるってのは」
ルカリオ「いいですけど、難易度高くないですか?気付いてもらえなかったら悲しいですし」
サーナイト「難易度高くてもやるしかないわよ。現実問題として、私やルカリオが、明日からいきなり、かわいい系のキャラや妹キャラでいけると思う?」
ルカリオ「…戦闘中に頭でも強打したのかと思われて終わりですね」
サーナイト「そうだよ。それにね、まあその路線が一番、素に近いから、やりやすいんじゃないかなって」
ルカリオ「実際は全くクールじゃないんですけどね。無愛想と言うか、不器用なだけで」
ルカリオ「私、毛皮があるんで頬染めは無理ですが」
サーナイト「あ、そっか。じゃあ、表情と仕草でカバーって事で、一緒に考えよ」
ルカリオ「はい、ありがとうございます」
サーナイト「あと、ルカリオは引き続き、笑顔の練習だね」
ルカリオ「威嚇してるように見えないように頑張ります」
ルカリオ「そうですね」
サーナイト「今日はルカリオ試合だったんだもんね。ごめんね、長々と」
ルカリオ「いえ、話せてよかったです」
サーナイト「明日はいい事あるといいね」
ルカリオ「はい、サーナイトさん」
おわり
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